四旬節第2主日(2月28日)の説教(テキスト)

ミサで読まれる福音と第一朗読(旧約聖書)はたいていマッチしています。

今日読まれたアブラハムの故事について、旧約聖書が単なる昔のお話としてではなく、現在につながるその意味を、理解してみたいと思います。

先週BSテレビでラッセル・クロウ主演の映画「ノア 約束の舟」が放映されました。旧約聖書に描かれているノアの箱舟の出来事についての現代的な解釈ですが、堕落した支配層と乱れた世の中にあって神がノアというしっかりした人を選び彼が被造物を選別して大洪水から彼らを救うという大筋は、旧約聖書のとおりでした。映画の中ではノアは自己中心的で頑固な権威主義者として描かれていましたが、これはこの映画独特の描写です。確かなことは、オリーブの枝をくわえた鳩が箱舟に舞い降りた時、それは彼らが助かったことであり、同時に神と人間の和解を象徴していることです。

神は人間に試練を与えますが、それは必ず人が再び立ち上がれるように助けてくださいます。

今日読まれた旧約聖書(創世記22-1~18)では、アブラハムが神より大事な一人息子を生贄に捧げるよう言われてしまいます。古代文明では、アステカやインカの文化でもあるように、人間を生贄にするというものがありました。アブラハムが生贄を捧げる直前にそれを止めましたが、これは私たちの神が私たちから何かが欲しい訳ではなく、私たちが自分の大事なものを他の人のために捧げる正義感を持って欲しいという希望を示しています。そして私たちが持っていると思っているものは必ず返すべきものであるので、自分だけの所有者としてふるまうのではなく分かち合うこと、自然環境を将来の子孫の代まで残すことを意味しています。

続いて読まれた福音書では、今も実際にあるタボル山という小さな山の山頂で、イエスが変容したことが語られています。

ペトロ、ヨハネ、ヤコブという3人の主要な弟子を伴ったイエスはこの山頂で、「白く輝き」はじめ、現れたエリアとモーセという、旧約聖書時代の預言者達と語り合い始めます。真っ白に輝くイエスは、神であるイエスの内面そのものを表し、イエスの十字架上の死と復活、神の勝利、神への信仰によって救われるなどのメッセージがそこには込められています。

この時、弟子たちにはまだその意味を完全には理解できてはいませんでしたが、光輝くイエスの姿を見て、イエスの内面を知りました。アブラハムも全てを捧げる直前まで行って、神の真実を知りました。

今、理不尽とも思えるコロナ禍に苦しむ私たちにとって、これらは何か示唆に富むものではないでしょうか。

アブラハムも3人の弟子たちも、最初は何もわかりませんでしたが、神に従った結果、より深く神の意図を理解できるようになったのです。

この四旬節の時期、よりよく私たちが何を神に願うのかよく考え、私たち同士の連帯を強め、神とつながりましょう。

 

2021年2月28日 | カテゴリー : 説教 | 投稿者 : HP編集者